小説「出口のない海」 横山秀夫/著 感想

『戦争なんて勇ましくも男らしくもない。ただ、悲しいだけだ――』

横山秀夫著、「出口のない海」を読みました。

あらすじ
≪甲子園の優勝投手・並木浩二は大学入学後、ヒジを故障。新しい変化球の完成に復活をかけていたが、日米開戦を機に、並木の夢は時代にのみ込まれていく。死ぬための訓練。出撃。回天搭乗。―しかし彼は「魔球」を諦めなかった。≫

第二次世界大戦最中の日本が舞台で、特攻兵器・人間魚雷「回天」を巡る、
野球に情熱を注いでいた大学生たちの、残酷で悲しい青春が描かれます。


この作品を読む前から、僕は人間魚雷「回天」の存在を知っていました。
2000年、僕が専門学校の1年の時に、一人の「人間」について調べて発表をするという授業がありました。
その時、僕のいたグループが選んだのが、特攻兵器、それも「回天」に関してのことでした。
図書館や本屋で「回天」のことを調べ、当時の人たちが集まるイベントや集会を探しては、取材に行きました。
そして、当時実際に「回天」に乗って訓練をしていたいう人に出会い、
その時の心境や状況などの詳しい話を伺ったのでした。
戦時中の真夜中の海の上で見た、たくさんのきらめく星が忘れられないと、
声を震わせ、涙を滲ませながらも語って聞かせてくれたことを、僕は今も、きっと一生忘れません。

その時の、話を思い出しながら、本書を読みました。

特攻に行くと決めるまでの決心と覚悟。
回天の故障で、出撃出来なかった無念さ。
それを、生き恥と考えてしまう、当時の心理と状況。

いつ死を迎えるかも分からない状況下での、揺れ動く心の描写が、実にリアルに描かれていて、感情移入しました。

「本当に国を守りたいのなら、国のために死ぬのではなく、生きて国を守ればいい」
主人公・並木の言葉が胸を打ちました。

さらに、並木の最後の手紙には、目頭が熱くなりました。
最後は、涙なしでは読めませんでした。

とても読み易い文章で、すんなりと読めました。
映画化も決まったようですが、わざとらしい演出だけはやめてほしいです。

最後に。
並木のセリフで「回天を伝えるために死のうと思う」、というのがありました。
本書を通して、映画を通して、人間魚雷「回天」の存在が、もっと多くの人に伝わればいいなと思いました。

評価:★★★★★






出口のない海 (講談社文庫)
講談社
横山 秀夫


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