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zoom RSS 小説「オリンピックの身代金」 奥田英朗/著 感想

<<   作成日時 : 2008/12/28 17:42   >>

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読みました。

あらすじ
≪昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。≫




いや〜、面白かった!!!!

東京オリンピックをメイン舞台としたスケールの大きさ。
次々に起こる爆弾テロと、警察側、犯人側からそれぞれ描かれる、息もつかせぬ攻防。
高度経済成長期の東京という街で味わう、地方との格差、支配層と労働者の激しい落差、
日の当たる者と日陰で生きる者との人生の不平等、浮き立つ国と都市への不満と憎悪。

スケール感やエンタメ性だけでなく、東京オリンピックと高度経済成長期という時代背景、光と影、
そして当時の思想や思考、状況など、ほんとに巧く反映し活かされていて、
この小説はすごく完成度の高いものだと思いました。

犯人の先の行動が読めずに、翻弄され迷走する警察と、
実はいつもギリギリのところで行動し、切羽詰って、本当は余裕のない状況で強行手段に出ている犯人との、
心理や思惑の対比が面白く、特に事件が起きない場面でも飽きることなく読めました。

主人公・国男の考えや姿勢、生き方も十分理解出来るものだから、自然と感情移入しちゃうし、
警察小説ではないけど、刑事の昌夫にも十分に理解出来て感情移入出来るので、
物語が良くも悪くもどんな風に、どっちに転がっていくのか、
楽しみな気持ち8割、どちらかが不幸になり、悲しくなるような気持ち2割りで読みました。

東京オリンピックという、実際の歴史に準えて描かれているため、
どういう展開を見せるのか大体の予想はついていましたが、まさかの展開もあるのかなって思うと、
最後は、もう一気に読めてしまいました。

この物語はフィクションだけど、今後テレビで当時の東京オリンピックの開会式映像を見るたびに、
実は会場の外で、客席内のどこかで、国男が一人行動を起こしているのかなぁって思っちゃいそうです。

最後、物語は結構唐突に終わってしまいましたが、
何か後日談という形で、何年後何十年後の誰かの視点で回想とかあると、もっと良かったのになぁと思いました。
まぁ、そんなの無くても十分に面白い作品ですが。

この作品、僕はすごく好きです。
来年の「このミス」1位も狙えると思うし、トップ10内には確実に入りそうな気がします。



最後に、印象的だった国男の台詞を。

『ぼくは国家などどうだっていいんです。かつて人民を戦争に駆り立てた支配層は、今度は経済の奴隷として人々を追い込もうとしています。犠牲者の上にしか繁栄を築けないのであれば、それは支配層のための文明です』

『人の上に立つということは、一等謙虚であらねばならないのだが、今の浮かれた日本でそれを自覚する者はいない。資本主義を盲信し、陽炎のような足場のない繁栄に集団で酔っている』



評価:★★★★★









オリンピックの身代金
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奥田 英朗


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【オリンピックの身代金】 奥田英朗 著
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じゅずじの旦那
2009/04/01 14:12
奥田英朗「オリンピックの身代金」
奥田英朗著 「オリンピックの身代金」を読む。 このフレーズにシビれた。  日本中が待った東京オリンピックが、いよいよ始まった。 ...続きを見る
ご本といえばblog
2010/03/27 06:48

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは、はじめまして。
なんだか、モヤモヤっとしたものが残るラストでした。
後日談もいいですが、
もし祝福ムードで終わるなら、他の二人の視点の後に、
昌夫の子供の報告シーンで終わって欲しかったかな。
真面目な人が馬鹿を見る世の中だな〜っとも思った。
私もその時代に生きていたら、オリンピック開催を誇りに思うだろうし、
妨害しようとする犯人は許せないとも思う。

相手と同じ痛みを知らなければ、
たとえ正論でも蔑ろにしてしまうんだなとも思った。
胸が締め付けられる話でした。
fumika
2009/01/06 23:20
こんばんは。コメントありがとうございます。
やっぱり、その後事件がどうなったのか、国男がどうなったのかが気になりますよね。僕個人としては、最後、現実と絡めて事件そのものが無かったことになっている、だからその後もない、というのは分からなくもないんですが、ずっと国男の思想と行動を見てきただけに、国男が死んだのか、生きているのか、生きているならどんな罰を受け、どんな余生を過ごし、どんな風に事件を振り返るのか、反省するのか、間違っていなかったと思うのか、僕はすごく気になりました。
それがあるだけでも、読み終わった後の国男に対する読者の印象は大きく変わったと思うんですけどね。良くも悪くも
ハル
2009/01/07 01:36

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